イベント開催報告 02

Published on 3月 27th, 2022 | by サイエンスらいおん事務局

0

2022年3月26日 サイエンスらいおんカフェ第87回(江口建さん)

※事前の広報内容はこちらです。
サイエンスカフェ87-チラシ

今回のゲストは、豊田工業大学教授の江口建さん。
今回も全国各地から、また中学生からシニア層まで幅広い年代からご参加いただきました。
恒例の参加者全員の自己紹介・近況報告の後、前半は江口さんからの話題提供からスタートしました。
02 01

江口さんは2年前まで帝京大学宇都宮キャンパスにて、主に哲学の講義などを担当されていました。
そのご縁で、何度からいおんカフェでもお話いただいたりしたのは、ご存知の方も多いと思います。
(過去のレポートなどもご覧ください)
その他にも、帝京大学内で哲学カフェ、地域団体とのコラボで親子対話カフェ、栃木県内の学校への出張講義で哲学対話など、様々な実績を残され、その一部には私も参加させていただいておりました。

2年前の2020年3月の第87回カフェのゲストとして江口さんにお越しいただく予定でしたが、直前にコロナ禍が始まってしまい、やむを得ず開催中止、その翌月には愛知県にある豊田工業大学へ着任されました。
あっという間に2年が経ち、らいおんカフェもリモート開催が続いている折、復活版87回目として、江口さんに再登板をお願いしました。
スライド1

今回のテーマは「ビジネスの哲学化」。
話題提供の柱や参加者と一緒に考えてみたいことなどは、以下の画像に示したようなものです。
スライド3 スライド4

いわゆる哲学そのものをビジネスとして利益を得ようという「哲学のビジネス化」とは異なりますので、ご留意ください。
スライド5

はじめに、「ビジネス」と「哲学」、それぞれどのようなものかということを江口さんなりに定義していただき、①企業や組織経営に何が必要とされるのか? そして、②哲学や対話がどのように貢献できるのか? という話から始まりました。
スライド6 スライド7 スライド8 スライド9

①については、これまで~現代の時代背景や企業・組織論、世代間ギャップから来る若者評、これから必要とされるスキル、今後あまり必要とされなくなる能力などについて、江口さんの視点で様々な情報を提供いただきました。
その中でも、「現代の働き方・生き方の多様化は、フリーランスな働き方、リカレント教育をはじめとしたいつでも学べる環境、個人などが自ら発信し、共感に訴えかけて収入を得るような収益構造、などを発生させている点」や「世代間ギャップによる価値観の違いの発生はある程度仕方ないにせよ、その背景には育ってきた環境の違いもあり、それ故に行動規範が違うことを受け入れがたい点」などは、改めて認識の必要性が高いと感じました。

その上で、これから必要とされるスキルの一つに「答えのない問いにどう立ち向かえるか?」という点が考えられるのでは?と想像しました。
この点は②の中で明らかになります。
アメリカでは”企業内哲学者(In-house philosopher)”をフルタイムで雇用する企業が現れてきていて、その背景はまさにこの想像に近いイメージでした。
スライド19

哲学者は企業内でどんなことをするのか?
端的に言うと、「問い直し」、「炙り出し」、「新しい観点を獲得する」ようなことだそうです。
「ものをつくり、開発する」だけでは、新しい価値を創造できない、ということに気付いている企業が相次いで哲学者を雇用し始めているとのこと。この背景には、従来の販売手法が通用せず、人材育成についてもゴールが見えにくい、といったことが影響しているようです。
これらのことを解決する一つの手段として、哲学的思考を導入した対話の試行というところに繋がっていると考えられます。
スライド24

実は、これは企業内に限ることではなく、地域や様々な組織・チームなどにも適用できるスキームであり、一定の領域で生活する市民に対する教育、いわゆる「市民教育」としての活用も可能とのことです。
スライド25 スライド26
スライド27

このような話題提供の後、後半は参加者からの質問や感想などをキャッチボールしました。
主な内容は以下の通りです。

  • 地域によって、課題が明確だったりそうでなかったりしていそう。
  • 企業内でのピラミッド感(垂直感)と対話に必要なフラット感(水平感)は両立可能なのか?
  • 哲学者を雇用している企業では具体的にどのようなことが行われているのか?
  • 今の若者像の一つの傾向として、自分とスマホの間の10cm程度の世界である程度コミュニケーションが完結してしまう分、リアルな人間同士の感覚が掴みにくいのではないか?
  • 世代間で「私が正しい」「俺が正しい」という、「正しい」のぶつかり合いは避けた方が良い。「私はこれが正しいと思うけど、あなたはどう思う?」という問いかけが必要。
  • 企業での新人研修に哲学対話を取り入れてみたら非常に効果的だった。
  • 勤務先のプロジェクトで哲学対話を取り入れてみようと考えている。
  • 物理学に理論物理学と実験物理学があるように、哲学にも理論と実践(哲学対話は実践)があるように感じた。
  • 哲学を地元で学ぶにはどうしたら良いか?

現役の会社組織にいる方、中学生、教員、教育業界、リタイヤ後にコミュニティに関わる方など、参加者の多様性から、様々な意見や質問が出され、江口さんや他の参加者からもそれに対するコメントが出てきました。

今回は話題提供からのスタートだったことや、今回の参加者の半数近くが哲学対話を経験したことが無いなど、提供された話題について深掘りする所まで行けなかったので、カフェ終了後に江口さんとお話させていただき、来月に続編を開催することとなりました。
会社のようなピラミッド型や、先生と生徒といった師弟型といった、いわゆる垂直型の組織で、どのように水平型の対話ができるようになるのか?というような観点で、次回は対話をベースにしながら、もう少し深掘りできればと考えています。

今回参加の方はもちろん、参加できなかった方やご興味持たれた皆さんも、ぜひ次回ご参加ください。
ご参加いただきました皆様、ありがとうございました。

[文責:藤平 昌寿(とちぎサイエンスらいおん客員研究員)]

 

Tags:




Comments are closed.

Back to Top ↑
  • イベントカレンダー

  • Facebookページ


  • Twitter @tochigilion


  • 第8回公開シンポジウム講演ダイジェスト

  • エンジョイ!カガク!!2013レポート

  • アーカイブ