2021年3月28日 サイエンスらいおんカフェ第96回(小澤いぶきさん・坂本麻人さん・塚田有那さん)
※事前の広報内容はこちらです。
※宇都宮市立東図書館(サイエンスらいおん参加機関)による参考図書一覧[PDF]
今回のカフェは公開シンポジウム連動企画第4弾。
2週間前に開催されたシンポジウム直後のゲストということで、ホッカホカのお話やシンポジウムでは公開されなかった映像なども観ることが出来ました。
ゲストは小澤いぶきさん・坂本麻人さん・塚田有那さん。
自治医科大学では今年度取り組んでいる、
JST-RISTEX 科学技術の倫理的・法的・社会的課題への包括的実践研究開発プロジェクト「技術構成主義」に立つ「生と死」をめぐる倫理の分析と社会的議論の啓発に向けた企画調査
のスペキュラティブ・デザイングループメンバーとしても活動されており、塚田さんは過日のシンポジウムでも、このグループの活動報告をしていただきました。
今回のテーマでもある「遠野」は皆さんもご存知でしょうが、岩手県の中部に位置する内陸のまちで、柳田國男の遠野物語やカッパ伝説などで知られている、ちょっとミステリアックなイメージを持つ方も多いかも知れません。
このグループでは今回のプロジェクトに際し、遠野の地域や人々に纏わる生と死=死生観にスポットを当て、現地の人々へのインタビューなどを通して、それらを映像アート作品として世に残す、という作業を行われました。
先のシンポジウムではこの映像作品のダイジェスト版が放映され、今回のカフェでは30分ほどのロングバージョンが初披露されました。
(zoomでの動画共有配信は、回線の状況等によりクオリティが左右されがちですが、今回は事前にゲストの皆さんに画質等を調整していただき、非常に没入感の高い配信をしていただきました。)
ゲストの皆さんも出来立てのロングバージョン映像をほぼ初めてご覧になったということで、感慨に浸られておりました。
カフェ前半は、映像視聴とゲストトークが中心でしたが、後半はチャットも併用しつつ、参加者の皆さんにも積極的にご参加いただきました。
(音声ではゲスト中心のトークが進みながら、チャットでは参加者同士やゲストも交えての別のトークが展開されるという、パラレルな状態で盛り上がりました。)
- 災害時(や、葬儀・会葬時など)はある種の「ハイ」な状態が表出することがあるのでは?
- 現代では昔よりも「死(や、それに纏わる葬儀などを)」隠したり、囲い込む傾向があるのでは?
- デンデラ野の風習が消えたことが、死の捉え方のある種の転換点だったのでは?
- 「生」の分化が進むと、「死」に向かう交流が乏しくなるのでは?
- 未来の葬儀や法要はどうなるのか?
- お墓を守る人が年々減少、お寺の存続問題は?
- 医療や交通などの現代技術の発達が、遠野の地域や人々の死生観に影響を与えてきた例は見受けられたのか?
などの質問から、話題が展開されました。
個人的に印象に残った点として、
- 遠野の地は意外に交流拠点であったこと(盆地ではあるが、海産物の物流や人の交流が盛んだったため、外部を排除する感覚が薄かったとのこと。)
- ゲストや参加者の話を聞くに、昔の人ほど「生と死」の円環性が高かったと思われること(対して、現代では「直線的」というイメージも)
- 昔は、当然ながら「生」に対する共同作業をしなければ人や集落が消えてしまうのと同等に、「死」に向けての共同作業も日常として行われていたということ。
など、面白い視点から観ることが出来ました。
そして、ここまでご覧いただくと、アートや文系寄りの話が中心なのか?と思われる節もございますが、対話を進めていけば行くほど、現代科学や技術に通ずる部分も出てくるな、と感じました。
過去を知り、今の立ち位置を認識し、未来の技術やビジョンに繋げる、という意味では、アートが十分に寄与できる部分だと思われます。
今回の映像作品は今後、各地での上映会等を企画していくそうです。
BGMとして流れる音楽も、今回の作品のために数名のアーティストに依頼されたとのこと。
様々な方々にご覧いただけることが期待されます。
次回のカフェは、今度はサイエンス側から死生学にアプローチするようなテーマとなります。
ぜひご期待ください。
ご参加いただきました皆様、ありがとうございました。
[文責:藤平 昌寿(とちぎサイエンスらいおん客員研究員)]