2020年1月26日 サイエンスらいおんカフェ第85回(村井邦彦さん)
※事前の広報内容はこちらです。
今回のカフェは、久々に帝京大学に戻ってきました。
ゲストは村井クリニック院長の村井邦彦さん。村井さんは筆者の高校の先輩であり、現在もお世話になっている知己の関係から、今回のゲストにお越しいただくことになりました。
村井さんをお呼びするきっかけになったのは、今年2020年元旦の下野新聞。
一面に大きく掲載されていたのが、特集連載「なぜ君は病に… 〜社会的処方 医師たちの挑戦〜」の初回記事。
そこに出ていたのが、村井さんでした。
村井さんは、宇都宮市医師会の「認知症・社会支援部」担当理事というもう一つの顔をお持ちなのです。
全国的にも珍しい社会支援部という活動。そして何よりも聴き慣れない「社会的処方」という言葉。
これまで何度か取り上げた社会科学と医学との学際的な話が聞けるのではないか?
ということで、今回のゲストにお招きいたしました。
村井さんは、医師の傍ら、社会的処方に関わる活動を日夜行っており、この日も午前中にがん哲学カフェ、午後はらいおんカフェ、そして夜も別の活動と、多忙な中お越しいただきました。
多くの資料とスライドをご用意いただき、多彩な話題を提供していただきました。
いくつかキーワードがありましたので、抜粋してご紹介しましょう。
まずは、「健康の社会的決定要因(SDH)」。
簡単に言うと、「健康は、生物学的な要因だけではなく、所得や教育・環境などの社会的な要因にも左右される」というようなことです。つまり、貧困や孤立といった事項も病気になる確率を高めている、という考え方です。
それらに対して、地域の組織やNPO、ソーシャルワーカーや行政などが手を組んで、社会的要因を取り除いて、地域全体の健康を確立しよう、という動きが「社会的処方」と呼ばれる活動です。
言い換えると、「生物学的な病因は医師が治し、社会的要因は街ぐるみで支えよう」ということになります。
村井さんは、自らの病院で在宅医療に積極的に取り組んでいく中で、患者のSDHに気付き、多様な人々と連携した社会的処方活動を始めたということです。
まずは、SDHの概念を一般の方にも知ってもらうこと、SDHの気付き方も多様にあること、気付いた後の処方例も多くあること、そのためには地域にどんな人たちが居るのかという地域資源を見える化すること・・・等々、予防医学的な地域の受け皿が必要であるということをご紹介いただきました。
参加者の皆さんも地域に対する問題意識を持っていらっしゃる方が多かったので、様々な観点からの質疑が行われました。
筆者自身も新たな発見もあり、今後の活動に活かせたら良いなと感じる所でした。
ご参加いただきました皆様、ありがとうございました。
[文責:藤平 昌寿(とちぎサイエンスらいおん客員研究員)]