イベント開催報告

Published on 6月 30th, 2016 | by サイエンスらいおん事務局

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2016年6月25日 サイエンスらいおんカフェ第42回(江口建さん)

※事前の広報内容はこちらです。

サイエンスらいおんカフェ vol.42のテーマは、「科学や哲学はなぜ敬遠される!?」
帝京大学で哲学を教えていらっしゃる江口建さんがゲストです。

当日は、江口さんが普段、慣れ親しんでいる「哲学対話」風で進行しました。
まず、テーブルを取り払って椅子を円状に並べて参加者が向かい合う形に。膝同士がくっつくかくっつかないかの距離です。
いつもより距離が近い分、ちょっと緊張しますね。

続いて、対話のルールについて江口さんからご説明が。
・自分以外の方がお話しているときは遮らない、また、その内容について否定しないこと。
・自分が話すときは難しい専門用語は使わず、伝わるように話すこと。
サイエンスカフェのルールにも通じるところがありますね。

また、哲学対話では、誰が発言しているかが分かりやすいように、発言する人がぬいぐるみを持ちます。
発言したい人は手を挙げ、ぬいぐるみをもらってから喋り始めます。終わったら次の挙手している方にぬいぐるみをパスするという形です。
ぬいぐるみはマイクの代わりのようなものですね。

この日は可愛らしいプーさんのぬいぐるみでした。
円状に並んだ参加者の中でプーさんが行き交う様子に雰囲気も和らいで、プーさんをうまくキャッチするたびに笑いが起こります。
また、個人的に感じたことですが、
膝の上にぬいぐるみを抱えて話すことで、なんとなく安心し、自分の内面にも目が向きやすくなる気がしたことも不思議な体験でした。

さて、本題のテーマについて。
江口さんが参加者に、「科学と哲学をひとことで表現してみてください。みなさんどんなイメージがありますか?」と問いかけます。
答えを紙に書いて、準備ができた方から発言していきます。

みなさん答えは様々でしたが、サイエンスカフェ常連さんもいらっしゃるので
「科学」に対しては「技術として使えるもの」「世の中の役に立つもの」など好意的なものが多かったですね。
一方、
「哲学」に対しては「何を考えているかよくわからない」「古代ギリシャのもの」「心理学?」など、
曖昧な答えもちらほら・・・。

参加者からの質問を受けて、江口さんが哲学を学んで感じたこと、そして学んできた哲学をどう活かすかについて話してくれました。
私自身、「哲学」というものは、「古代ギリシャの哲学者はこう言っていた」というような哲学史をなぞる学問であるというイメージが強かったのですが、
江口さん曰く、哲学は、現代に生きる私たちにとっても、本当に困ったときに、自分を助けてくれる、ひいては、より善く生きる助けになるものだそう。
そもそも哲学史をそのまま教え込むようなやり方は哲学の本質ではなく、
寧ろ、事前知識や常識などを一度ゼロにし、自分の頭の中でゼロから答えを導き出す行為自体が哲学の本質だと江口さんは仰います。

自分の頭で考える?
そんなこと、いつもやってるよ。と思った方も多いかもしれませんが、本当にそうでしょうか?
私たちは今までの経験や情報から、「答えらしきもの」「世間から良い(あるいは常識的)と判断されるもの」を知らず知らずに選んでいて、
それがあたかも自分の選択であるかのように思い込んでいる節も多いのかもしれません。

今、インターネットには様々なニュースサイトが乱立していていますが、その大半は事実と反する内容を掲載しているとして問題になっています。
(参照:ネットに広がる「フェイク・ニュース」ー嘘と真実の見分け方とは[外部サイト])
本当に問題なのは、そのような嘘のニュースを信じてしまいFacebookなどのSNS等で共有・拡散している人が多いということです。
そのような行動の背景にあるのは、前述した「知らず知らずの選択」であると指摘されています。
人はネットニュースのリンクを選ぶ際、決してランダムではなく、自分の中の価値観や常識(あるいは偏見)などに沿った見出しを無意識に選んでしまうそうです。
即ち、自分の好みのニュースしか目に入らない状態になっていて、
選んだ情報が自分の価値観と矛盾しないことから、その内容を簡単に信じやすくなっていまい、
さらに考えが偏っていくという悪循環に陥ってしまう可能性があります。
そんなとき、本当にそうかな?反対の考え方はないのかな? と自分の中で対話すべきなのかもしれません。

また、自分でゼロから考える、と言っても他者を排除して良いという意味ではありません。
哲学者は他者との対話を大切にする、というお話も伺いました。
他者との対話で互いを助け合ったり、自分の中にない価値観を付け足してさらに自分の中で対話し、噛み砕き、考えを深めていく行為が
より良い答えのために必要で、古代ギリシャの先人たちの教えもヒントとして捉えられるのだそうです。

今回のカフェに参加して、「哲学」は「(自分や他者との)対話を通して考えを研ぎ澄ましていくもの」、
その上で「自分の中に答えを見つけるもの」という新たなイメージが湧きました。

一方「科学」は先人の研究者たちが見出した真実(データ)を礎に、新たな知見を積み重ねていくことで答えが深まっていきます。
そこには人的な要素をできる限り排除した客観性が求められます。
誰がやっても同じ結果が出る。即ち「再現性」が重要視されますので、「自分の外に答えがあるもの」と言うこともできるかもしれません。

しかし哲学のように、事前の情報や常識を鵜呑みにしないで様々な可能性を考えて仮説を組み立てる思考力は必要とされますし、
また、医療の選択やエネルギー供給問題など、科学技術の発展が与えてくれる恩恵には、良い悪いと白黒つけることが非常に難しい、
それでも議論して答えを出していかなければいけない側面もあり、
科学と哲学はどこか深いところで繋がっているのだと感じました。そもそも、学問を切り分けて考えること自体、きっと難しいのですね。

ぜひ今後も、学問の枠に囚われないサイエンスカフェができたらいいなと感じました。
江口さん、ありがとうございました。

【レポート:武谷真由美(サイエンスらいおんカフェスタッフ)】

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